これまで日本では離婚後の親権は単独親権が原則でしたが、2024年5月に共同親権を導入する民法改正案が成立しました。この改正により、日本でも離婚後に両親が親権を持つことが可能となり、共同親権か単独親権かを選択できるようになります。
本記事では、共同親権の概要や改正の詳細、導入によるメリット・デメリット、今後の課題について詳しく解説します。
1. 共同親権とは?
共同親権とは、離婚後も両親が子どもの親権を持ち、養育や意思決定を共同で行う制度です。日本ではこれまで単独親権が原則でしたが、今回の法改正により、離婚時に共同親権を選択することが可能になりました。
① 共同親権の主な特徴
- 離婚後も両親が親権を共有し、子どもの重要な決定を共同で行う
- 親の一方が決めるのではなく、子どもの教育・医療・進学などを協議する
- 原則として、子どもは両親と関係を維持する
② 単独親権との違い
親権の種類 | 概要 |
---|---|
単独親権(現在も選択可能) | 離婚後、どちらか一方が親権を持ち、もう一方は親権を失う。 |
共同親権(新たに導入) | 離婚後も両親が親権を持ち続け、共同で子どもの養育や意思決定を行う。 |
2. 日本での共同親権導入の背景
今回の法改正の背景には、以下のような要因があります。
① 子どもの福祉の観点
共同親権により、子どもが両親の愛情を継続して受けられる環境を確保することが目的とされています。
② 国際基準への適合
欧米では共同親権が標準となっており、日本も国際基準に合わせる必要があるとされていました。
③ 親子断絶の問題
単独親権制度では、離婚後に非親権者の親と子どもが関係を維持しにくい問題がありました。共同親権を導入することで、この問題の解消が期待されています。
3. 共同親権のメリット・デメリット
① 共同親権のメリット
- 子どもが両親との関係を維持しやすい
- 教育や医療などの意思決定に両親が関与できる
- 親権争いの過熱を防ぐ
② 共同親権のデメリット
- 離婚後も親同士の対立が続く可能性がある
- DV・モラハラ被害者が加害者と関わらざるを得なくなる
- 重要な決定で意見が対立した際の調整が難しい
4. 共同親権が導入されている国の事例
日本以外の国では、すでに共同親権が導入されており、一定の成果を上げています。
① アメリカ
州ごとに異なりますが、多くの州で共同親権が標準となっています。裁判所は「子どもの最善の利益」に基づいて判断します。
② フランス
原則として共同親権が採用され、両親が協力して子どもを育てることが求められます。
③ ドイツ
1998年に共同親権制度が導入され、離婚後も両親が共同で子どもの養育を行うことが義務付けられています。
5. 日本における共同親権の課題
共同親権の導入には、多くの課題も存在します。
① DV・虐待のリスク
共同親権が導入されると、DV加害者が親権を維持する可能性があり、被害者の保護が難しくなる恐れがあります。
② 意思決定の困難さ
教育や医療などの重要な決定で意見が対立した場合、解決策が必要になります。
③ 司法・行政の支援体制
共同親権を円滑に運用するためには、家庭裁判所や自治体の支援体制が整備される必要があります。
6. 共同親権の施行時期
今回の法改正により、共同親権制度は2026年5月までに施行予定となっています。それまでに詳細な運用ルールやガイドラインが策定される見込みです。
まとめ
日本ではこれまで単独親権が原則でしたが、2024年5月の民法改正により、離婚後も両親が親権を持つ共同親権制度が導入されることが決定しました。これにより、子どもが両親と関係を維持しやすくなる一方、DVや意思決定の問題などの課題も残されています。
今後、法改正の詳細や具体的な運用方法が確定していくため、引き続き最新の情報に注目していく必要があります。