事実婚からの離婚はどうなる?法的手続きと問題点

1. 導入:増えている事実婚という選択

近年、婚姻届を提出せずに夫婦同様の生活を送る事実婚を選択する人が増えています。価値観の多様化や、法律婚に縛られない生き方を望む声が背景にあります。しかし、事実婚関係が破綻した場合、「離婚」という形は取れるのか、法的にはどのような扱いになるのか、不安を感じる人も少なくありません。本記事では、事実婚から別れる場合の法的手続きと、注意すべき問題点について詳しく解説します。

2. 事実婚とは何か

事実婚とは、婚姻届を提出していないものの、社会的に夫婦として共同生活を営んでいる関係を指します。住民票で「未届の妻・夫」と記載されている、生活費を共同で負担している、周囲から夫婦として認識されているなどの実態がある場合、事実婚と判断されやすくなります。

法律婚とは異なり、戸籍上の夫婦関係は成立していませんが、一定の条件を満たすと法的保護を受けられる場面もあります。

3. 事実婚の解消は「離婚」ではない

事実婚を解消する場合、法律上は離婚届の提出は不要です。そもそも婚姻関係が戸籍上存在しないため、当事者の一方または双方が共同生活を解消すれば、事実婚関係は終了します。

ただし、「別れれば終わり」という単純な話ではなく、生活実態が夫婦同然であった場合には、解消に伴ってさまざまな法的問題が生じる可能性があります。

4. 財産分与は認められるのか

事実婚であっても、実質的に夫婦として協力して築いた財産については、財産分与が認められる場合があります。これは、不当な経済的不利益を防ぐための考え方です。

  • 同居期間が長い
  • 生活費や住宅ローンを共同で負担していた
  • 家事・育児などの貢献があった

これらの事情が考慮され、法律婚に準じた形で財産の分配が行われることがあります。ただし、名義や証拠の有無が重要になるため、トラブルになりやすい点には注意が必要です。

5. 慰謝料は請求できるのか

事実婚であっても、不貞行為やDVなど、関係破綻の原因が相手にある場合には、慰謝料請求が認められる可能性があります。重要なのは、「事実婚として保護される関係性があったかどうか」です。

単なる同棲と区別するため、周囲への夫婦としての説明、共同生活の実態などを証明できる資料が判断材料となります。

6. 子どもがいる場合の問題

事実婚中に生まれた子どもについては、法律上の扱いに注意が必要です。母親との親子関係は自動的に成立しますが、父親との関係は認知が必要となります。

事実婚解消後、子どもの養育費や面会交流をめぐってトラブルになるケースも少なくありません。事前に話し合い、書面で取り決めをしておくことが重要です。

7. 事実婚解消で起こりやすい問題点

事実婚からの別れで特に問題になりやすいのは、以下の点です。

  • 財産の名義が一方に偏っている
  • 口約束のみで取り決めをしていた
  • 事実婚であることの証明が難しい

法律婚と比べて制度上の明確な枠組みが少ない分、当事者間の認識のずれが紛争につながりやすいといえます。

8. まとめ

事実婚からの別れは、法律上は離婚とは異なり、届出なしで解消できます。しかし、実態が夫婦同然であった場合には、財産分与や慰謝料、子どもに関する問題が生じることがあります。トラブルを防ぐためには、事実婚の段階から生活の実態や取り決めを明確にしておくこと、そして解消時には専門家に相談しながら冷静に対応することが重要です。

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