離婚において大きな争点になりやすいのが財産分与です。十分な準備をしないまま話し合いに入ると、「そんな財産があるとは知らなかった」「本来もらえるはずの分を逃した」という結果になりかねません。
財産分与は感情論ではなく、事前準備の量と質で結果が左右されます。本記事では、離婚前に必ず行っておきたい実務的な準備事項を整理し、損をしないための考え方を解説します。
1. 財産分与の基本を正しく理解する
まず重要なのは、財産分与の対象となる範囲を正しく理解することです。
原則として、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産は共有財産とされ、名義に関係なく分与の対象になります。
- 預貯金
- 不動産
- 保険の解約返戻金
- 株式・投資信託
- 退職金(一定条件下)
一方、結婚前から所有していた財産や相続財産などは、原則として特有財産となります。
2. 共有財産を漏れなく洗い出す
損をしないために最も重要なのが、共有財産の全体像を把握することです。
2-1. お金に関する財産の確認
- すべての銀行口座の残高
- 定期預金・積立口座
- タンス預金
- 電子マネー・ポイント残高
自分名義だけでなく、相手名義の口座についても存在を把握しておくことが重要です。
2-2. 不動産・高額資産の確認
- 自宅・投資用不動産
- 車・バイク
- 貴金属・高額な美術品
購入時期が婚姻期間中であれば、名義にかかわらず分与対象となる可能性があります。
3. 証拠・資料を事前に確保する
財産分与では「言った・言わない」ではなく、客観的な資料が判断材料になります。
3-1. 金融関係の資料
- 通帳のコピー
- 取引履歴
- 保険証券
- 証券会社の残高報告書
可能な限り最新のものを保存し、離婚協議前に手元に確保しておきましょう。
3-2. 不動産・ローン関連書類
- 登記簿謄本
- 売買契約書
- 住宅ローン残高証明書
資産だけでなく、負債の状況も正確に把握することが重要です。
4. 財産を勝手に処分されるリスクに備える
離婚の話が出ると、一方が財産を隠したり、処分したりするケースもあります。
そのため、話し合いを本格化させる前に、証拠を確保しておくことが自分を守る手段になります。
不審な動きがある場合は、記録を残し、早めに専門家へ相談することも検討しましょう。
5. 「2分の1が原則」でも例外はある
財産分与は原則として2分の1ですが、必ずしも機械的に半分になるとは限りません。
- 著しい収入差がある場合
- 一方の浪費や不誠実な管理がある場合
- 婚姻期間が極端に短い場合
自分の状況が例外に該当する可能性があるかどうかを、冷静に整理しておくことが大切です。
6. 話し合い前に「争点」を整理する
準備が不十分なまま話し合いに入ると、相手のペースで進んでしまいがちです。
事前に以下を整理しておきましょう。
- 分与対象となる財産の一覧
- 自分の希望と最低ライン
- 譲れる点・譲れない点
感情ではなく、整理された情報をもとに話すことが重要です。
7. まとめ
財産分与で損をしないためには、離婚前の準備が何よりも重要です。
- 共有財産を正確に把握する
- 証拠や資料を事前に確保する
- 話し合いの前に争点を整理する
準備は相手と争うためではなく、自分の生活を守るための行動です。冷静に、そして着実に準備を進めることで、後悔のない財産分与につながります。
